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日本版US-VISITの停止と見直しを求める
 

日本版US-VISITの停止と見直しを求める

2007年11月20日
反住基ネット連絡会

日本政府が、入国する「外国人」から指紋と顔写真を強制的に収集するシステム(いわゆる日本版US-VISIT−−外国人個人識別システム)を11月20日から稼動することに対して、反住基ネット連絡会は強く抗議するとともに、このシステムの停止と制度の見直しを政府に求めます。

日本政府の「電子政府」構築政策は
市民の批判から何も学んでこなかった

現在の電子政府・電子自治体構築政策が始まった当初の2002年8月、日本政府の「IT政策」は、「住民票コード通知の受け取り拒否」という、全国規模の地域住民・市民からの「批判」の対象となりました。この批判は、横浜市では80万人を超える規模(横浜市人口の約4分の1)に及んでいます。しかし日本政府は、この行政に対する強い不信の表明から何も学ぶことなく、日本版US-VISITでもまた、新たな「IT政策における失敗」を繰り返しています。
日本政府がすでに明らかになっている「失敗」からから何も学ばないのであれば、日本政府のIT政策は11月20日以降、世界規模の市民からの批判を受けることになるでしょう。  すでに、在日外国ビジネス団体*1や、世界各地のNGO*2による声明が公開されています。
多くの場合このような意識的な「批判」が、外国人自身が来日を避ける−−「指紋と顔写真を強制収集する日本」との交流を回避するという形で具体化されることは、すでにUS-VISITの「本家」アメリカでも経験的事実になっています。その結果日本の国際観光産業や国際航空産業は一定の直接的なダメージを受けるでしょう。同時に、いわゆる「高度人材」の確保・交流が阻害されることから、国内の先端技術産業などは中長期的な衰退を余儀なくされるでしょう。

日本政府の政策は、「プライバシー」を無視している

反住基ネット連絡会は、「住基ネット」問題にかかわる中で日本における電子政府・電子自治体構築政策が抱える多くの問題を批判してきた視点から、ここではとくに以下の2点を強調しておきたいと考えます。

1 日本政府の電子政府・電子自治体構築政策におけるプライバシー(基本的人権)の侵害は、日本版US-VISITによってますます深刻なものになる

US-VISIT(アメリカ)の実績が示したように、日本版US-VISITもまた、制度が目的とする「テロリスト対策」には無効であり、「移民」(移住労働者)のプライバシーを侵害することによって「外国人」への監視・管理を強化することになるだけでしょう。「US-VISIT」という「アメリカ政府によるグローバル・スタンダード」は、結局のところ「先進国」における労働力不足を補うために「外国人」を低賃金の移住労働者として管理・監視することが、本来の目的だと考えざるを得ません。
憲法上の規定がとくにあいまいになっている「外国人(在日・移住労働者など)の基本的人権(プライバシー)」は、すでに深刻な状況におかれています。「国民」に対しては実施していないと政府が言明する広範な「個人情報の一元的結合」による個人の監視・管理も、「外国人」に対しては、法務省の「出入国管理システム」ですでに実施されており、さらに「入管システム最適化計画」およびその後の外国人労働者受入政策の検討・法制化の中で拡大・効率化されることが示されています(*3および後述)。
日本政府の「IT導入政策」は、法的規定が明確でないことを理由として、実質的に「プライバシー」を無視し続けてきました。政府が「プライバシーの尊重」に言及する場合でも、それは「情報セキュリティ対策の強化」以上の意味を持たず、その結果「外部漏えいにともなうプライバシー侵害」が防御され得たとしても(きわめて疑問ですが)、システムの運用にともなう政府内部での基本的人権の侵害・プライバシー侵害については、なんら防御されません。

2 日本版US-VISITもまた、多数の行政機関・自治体・民間企業などと個人情報を共有するため、そのプライバシー侵害のリスクはきわめて大きなものになる

米連邦議会行政監査局(GAO)はUS-VISITに対して、
 US-VISIT計画を支援するシステムには情報セキュリティ管理に関して重大な脆弱性があり、このため、個人の特定が可能なセンシティブ情報が権限のない者に読み取られ、改ざん、あるいは悪用、破壊され、場合によってはそのことが検知されることなく行われる恐れが増している。そうした脆弱性は、調査を行なったすべての管理領域、およびあらゆる種類のコンピューター機器に存在していた。アクセス制御およびその他のシステムの統制に欠陥があり、このため、大型コンピューター、ネットワーク設備、サーバー、ワークステーションなどが内外双方からの脅威にさらされている。*4
と指摘しています。
「IT最先進国」ともいえるアメリカの政府においてこのような状況にあることを踏まえるなら、アメリカ政府の情報セキュリティ管理水準を日本政府が超えていると考えるべき理由はないので、「日本版US-VISIT」もまた「システム内外からの重大なプライバシー侵害」の脅威を免れるものではありません。

US-VISIT(アメリカ)は、「既存の多数のシステム」を基礎として再構築された「システムのシステム」だといわれています。このような技術的特性は「住基ネットのシステム全体」(国の機関や市町村のシステムを含むネットワークの全体)と同じです。このためUS-VISIT(アメリカ)は「指紋」を含むきわめてセンシティブな個人情報を扱うシステムでありながら、「住基ネット」で指摘され続けてきたことと同じ性格の「情報セキュリティ上の大きなリスク」をかかえこんだまま、運用されています。
さる11月6日、法務省入管局の担当者は、移民労働者と連帯する全国ネットワークに対して、「日本のシステムはアメリカと異なりきわめて閉鎖的なものになっている。だから連邦議会行政監査局(GAO)が指摘する問題は回避されている」という主旨の説明を行っていました。

しかしたとえば、現在具体化に向けた作業が進んでいる「外国人登録」事務のオンライン化によって、市町村の「住民情報データベース」は「入管システムデータベース」に外部接続され、情報が共有されるることになると考えられます。したがってここでは、「住基ネット」と同じく、市町村のシステムにおける情報セキュリティ管理の水準が「入管システム」全体の情報セキュリティ管理の水準を決定するきわめて重要な要因になります。同様の問題は、外国人雇用状況報告が厚生労働省と法務省の間で相互共有(外部接続)されることになったことについても指摘できます。
2006年3月の「入管システム最適化計画」には、このような「外部接続/個人情報の相互共有」はすでに従来から、財務省・警察庁・APIS(民間)などとの間で行われていることが示されています。そしてこうした「相互接続」は、外国人労働者受入政策の具体化の過程で急速に拡大すると考えられます。
したがって、日本版US-VISITが「閉鎖的だから安全」であるとはいえず、そのプライバシーに対するリスクは今後急速に高まると考えることが現実的です。
以上

*注
*1 たとえば、http://www.debito.org/index.php/?p=692
*2 プライバシー・インターナショナル他68団体の国際署名による鳩山法務大臣への手紙。
  http://www.privacyinternational.org/article.shtml?cmd[347]=x-347-558619br
  反住基ネット連絡会も署名。日本語訳全文
*3 添付資料参照
*4 太字と下線は引用時付加。GAO-07-870報告書p.2
  http://www.gao.gov/new.items/d07870.pdf
 または、こちらから


<添付資料> 法務省「入管システム最適化計画」2006.3.31より作成



日本版US-VISITに対する
市民団体国際抗議書簡


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