声明

「新たな在留管理制度」と
住基台帳法改定案に関する声明

「新たな在留管理制度」と
住基台帳法改定案に関する声明

2009年4月14日
反住基ネット連絡会


政府は2009年3月3日、外国籍者を住民基本台帳に記載するための「住民基本台帳法」改定案を、6日には「外国人登録法」の廃止を含む「出入国管理及び難民認定法」(入管法)改定案、および「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」(入管特例法)改定案を国会に提出しました。
私たちは、住民基本台帳への外国籍者の記載を可能にする改定には、基本的に賛成です。外国籍者をその自治体の住民として受け入れることは、外国籍者に対するさまざまな住民サービスの提供や権利保障に資する場合が多いと考えるからです。
しかしながら今回の改定案には、以下のような見過ごせない問題があります。
  1. 住民基本台帳への記載によって、外国籍者にも住民票コードが付番され、住民基本台帳ネットワーク・システム(住基ネット)に登録される

  2. 外国籍者に対する住民基本台帳事務が、別途国会に提出されている入管法等改定案による国の「新たな在留管理制度」に連結されることは、地方自治の本旨にも、住民基本台帳法の目的にも反する

■金食い虫システム――住基ネットを拡大させるな

住基ネットは、稼働以来数千億円の経費をかけながら、その中核を成す住基カードの普及率はたったの2%に過ぎません。
 当初より「住民の利便性向上」には多くの疑問があり、現実にも何ら利便性の向上に貢献していないことは明白ですが、加えて、一方の導入理由である「行政事務の効率化」にも貢献していないことが明らかとなっています。唯一、国民年金事務においてのみ利用が進んでいますが、これとて必ずしも住基ネットの利用が最善の手段とは言えず、十分な費用対効果をあげているとは言えません。
 加えて、住基カードを使った公的個人認証も104万人(0.9%)しか利用者がおらず、「電子政府・自治体のインフラ」にするという構想も完全に破たんしています。
このように、住基ネットは、ただの税金の無駄づかいシステムと化しています。このように無駄なシステムに、新たに200万人にのぼる外国籍者の情報を追加することは、税金の無駄づかいを増大させるだけです。

■住基ネットによる人権侵害被害者を、これ以上増やしてはならない

現実にはすでに「失敗」していることが明らかな「住基ネット」には、個人情報の利用等に関する本人の自己決定権=自己情報コントロール権を担保する仕組みがありませんから、これはそもそも権利の制限を前提としたシステムです。そして、このような住基ネットの基本的人権無視の特性は、日本政府と日本の現行法体系が持つ特性――人権の過剰な制限という特性を、そのまま反映したものにほかなりません。
 そのような「人権侵害の仕組み」に、新たに外国籍者を加えることで、それによる被害者を増やすことはとうてい許されません。
行政府が個人の権利を制限する場合、それによる相当の公益性が担保されていなければなりません。しかしながら、「失敗した住基ネット」が個人の利便性にも行政の効率化にも貢献していない現状では、プライバシー権を制限するに相当する公益性があるとはとても言えず、住基ネットは、公益なき権利制限、すなわち単なる人権侵害の仕組み以外の何ものでもないと言わざるを得ません。
さらに付け加えるなら、上記したように、住基ネットは「電子政府・電子自治体のインフラ」とされていますが、その電子政府・電子自治体にアクセスするには、住基カードの取得が必須です。であるなら、その住基カードが任意取得である以上、住基ネットへの参加も任意であってしかるべきです。ところが現実には、原則として住民全員強制参加です。このことの一事をもってしても、住基ネットは「人権侵害の仕組み」であることは明らかです。

■「住民全員強制参加」の原則の影で
「見えない存在」を生み出す住基法改定案

この「住基ネット全員参加」の原則は、今回の住基法改定案によって深刻な自己矛盾をさらに抱え込むことになりました。
  1. 「全員強制参加」の原則にもかかわらず、外国籍住民の約6%(約13万人)を住民基本台帳から排除することを予定している
    今回の改定案は、オーバーステイや難民申請中の人など、非正規滞在者について住基台帳に「記載せず」、あるいは外国人住民票を「消除」するとしています。

  2. 「全員強制参加」の原則にもかかわらず、法務省入管局の大きな裁量権にもとづく「在留資格」の停止処分などによって、外国籍者を国・都道府県・市町村の行政サービスからは「見えない存在」――住基ネットによる本人確認ができず「行政サービスが提供されない」存在にする
     日本籍住民であれば「住民票の写しの添付」のような「住基ネット」を迂回する手続きが用意されており、大阪・箕面市の住民票コードを削除した1人の市民も、行政サービスから排除されることがありません。しかし「外国人住民票」が「消除」される人たちなどには、このような迂回路ははじめから用意されていません。

■在留資格の有無と住民基本台帳への記載を関連づけるな

この度の入管法等改定案および住民基本台帳法改定案では、自治体は、住民基本台帳への外国籍者の記載や消除などについて法務省に通知しなければならず、また、在留資格の状況によって住民基本台帳への記載が左右されるなど、住民基本台帳事務について法務省の強い干渉を受けることになります。私たちは、なぜ自治事務たる住民基本台帳事務が、中央省庁からのこのような干渉を受けなければならないのか、まったく理解できません。
 住民基本台帳に記載された外国籍者の個人情報の法務省による利用目的とは何でしょうか。そして、その公益性とはいったい何なのでしょうか。そのことに関する明確で合理的な根拠が示されない限り、それは住基ネット同様、単なる人権侵害の仕組み以外の何ものでもありません。
加えて、なぜ自治事務である住民基本台帳事務について法務省の「通知(実質は指示)」に従わなければならないのか、その理由が理解できません。在留資格の有無と、自治体が住民として受け入れるか否については、本来はまったく関連づける必要がありません。
 国が付与する在留資格の有無を住民たる要件とするかどうかは、それぞれの自治体が地域の特性を勘案しその現状と必要にもとづいて、自ら判断することです。
 自治体は国の出先機関ではありません。

以上の点から、外国籍者の受け入れに関して住民基本台帳法の改定をするなら、まず第一に住基ネットを廃止すべきです。「住基ネットの失敗」に対する真摯な反省と責任の明確化を抜きにしたいかなる住民基本台帳法の改定も、私たちは受け入れることができません。

以上


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「在留カードに異議あり!」
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