声明・申し入れ・意見書など

吹田・箕面・守口3市の市長あて(各市議会議長へ同報) 2006年12月6日

住基ネット訴訟に関する緊急要請

2006年12月6日

箕面市長 藤沢純一さま
吹田市長 阪口善雄さま
守口市長 喜多洋三さま

反住基ネット連絡会

住基ネット訴訟に関する緊急要請

住基ネット連絡会は、11月30日大阪高等裁判所第7民事部(竹中省吾裁判長)で出された判決について、箕面市、吹田市、守口市に、最高裁への上告をしないよう要請します。

ネットワーク社会の深化と「プライバシー」

地球規模での「ネットワーク社会」の深化の中で、「該当する日本語が存在しない」といわれる「プライバシー」について、日本の社会もこの数年で高い水準の議論を積み重ねるようになってきました。
 この議論は、ネットワークの普及拡大にともなう個人情報の、利用の高度化、流通量の急速な拡大、流通関係の複雑化など、現在進行中の社会変化に私たちが適応していくためのものです。したがって、「結論」は容易に得られるものではないでしょう。流動する社会状況に対する柔軟で多様な対応・適応を、私たちは当分の間続ける必要があるはずです。

大阪高裁が提起している「モラトリアム」

今回の大阪高裁判決は、こうした日本社会の変化とそれに適応しようとする議論の水準をふまえたとき、国の政策における「個人情報の利活用」の突出に一定のブレーキをかけ、「プライバシー」に関する社会的な議論をさらに積み重ねる必要があると、司法が判断したことを示したものです。

「自己情報コントロール権」と「行政への信頼」

一連の、住基ネット差止訴訟地裁判決などを見ていくと、プライバシー権としての「自己情報コントロール権」を、行政機関における個人情報の運用についてどのように導入していけばよいか、住民側敗訴の判決を含めて、司法としてきわめて慎重な検討を積み重ねてきていることが分かります。
 そしてその基調は、プライバシー権としての「自己情報コントロール権」を行政機関の個人情報運用から一律に排除すべき法理論上の根拠はなく、「自己情報コントロール権」は一定の条件のもとで行使される−−という方向性を持つものでした。
 このような司法の問題意識はまた、行政による個人情報の運用において、行政自身が「一定の条件」を満たす不断の努力を続け、個人情報の本人(地域住民や国民など)からの信頼を維持していかなければ、すでにしばしば指摘されている「行政不信」が高まり、行政は社会的機能を十全にはたせなくなだろうという、司法としての鋭い認識に支えられています。

「適法な」個人情報の運用の中で発生してしまう「問題」

11月30日の大阪高裁判決できわめて注目されることのひとつは、住基ネットから提供された本人確認情報について、提供先で「適法な利用目的の変更」が行われたとき、その本人確認情報の運用・提供について住民あるいは自治体(たとえば都道府県本人確認情報保護審議会)が適切に把握することは、法制度上担保されていないという、具体的な法文上の指摘です(判決p.78-79)。
 判決はこの事実を「上記利用目的変更の適切な運用が厳格になされる制度的な担保は存在しないといわざるを得ず」、その結果「住基法の利用目的明示の原則(同法4条)が形骸化する危険性は高い」と評価しています。
 「目的外利用禁止の例外」についても、判決は、適法な「目的外利用」の結果「行政機関が個別に保有する個人情報の範囲が拡大して、少数の行政機関によって、行政機関全体が保有する多くの部分の重要な個人情報が結合・集積され、利用される可能性は決して小さくないといえる」ことを指摘しています(同判決p.82)。

日本の個人情報保護法制を「考え直す」ことの必要性

これらは、従来議論されてきた「不正な個人情報の利用」の問題ではありません。

 現在の法制度による「適法な個人情報の運用・提供」であっても、個人情報が「本人の予期しない時に予期しない範囲で行政機関に保有され、利用される」こと、そこでは「利用目的の本人への明示」という個人情報保護法制の原則が機能していないこと、そして、このような問題を現行法制度の「運用」だけでリカバーすることもまた制度上困難であることが、ここでは指摘されています。
 つまり今回の大阪高裁判決は、急激な社会変化に適応できていないために顕在化してきた日本の個人情報保護法制の「問題」について、憲法の基本的人権の視点からじっくりと「考え直す」必要性を司法として提起したものにほかなりません。

「プライバシーを考え直す」ための選択を

3市市長に要請します

繰り返しになりますが、ネットワークの普及拡大にともなう個人情報の、利用の高度化、流通量の急速な拡大、流通関係の複雑化など、現在進行中の社会変化は、従来考えられていたよりもはるかに大きな社会的インパクトを持つものでした。大阪高裁判決にある指摘は、行政と私たち地域住民が、こうした制度的不備による数多くの「危険」(の可能性)に、すでに現在、取り巻かれていることを教えてくれました。

 私たちは、高裁判決を受けた3市の市長に、この判決に対して上告をせずに、日本社会が現在の「プライバシー」関連法制度を「考え直す」きっかけとなる選択をされるよう、改めて強く要請させていただきます。


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